よくある質問:ミシガン州では、競業避止義務条項・勧誘禁止条項は、有効か(執行可能か)? | Loaded Questions: Are Noncompetition and Nonsolicitation Clauses Really Enforceable in Michigan?
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労働法専門弁護士として、当職らがクライアントや同僚からよく聞かれる質問の一つが、「競業避止義務は実際には強制力がないというのは本当か?」というものです。具体的には以下のようなバリエーションがあります。
雇用主(弊所クライアント)「元従業員が他で働くことを禁止したいとは思っていません。主要な従業員には秘密保持契約書にサインしてもらっています。」(当職としてはひと安心。)
雇用主(弊所クライアント)「従業員全員に競業避止義務を課しサインをさせています。違反した者は実刑を受けてもらって構わない。」(当職らとしてはクライアントと厳しい議論を交わすことになるなと覚悟します。)
従業員(弊所クライアント)「勧誘禁止条項は法的効力がないと思っていたので、前に勤めていた会社の顧客リストを使って、知り合いの顧客やクライアントに電話をかけました。」(当職らとしては、(前の勤務先会社から)訴訟提起を受けると予期します。)
あらゆるコベナンツ(退職後に一定の義務を課す条項)[i]の執行可能性は、基本的に州法によって定められます。どの州法が適用されるかについては、従業員がどこで働き、どこに住んでいるか、雇用者がどこで事業を行っているか、そして契約がどこで締結されたかが、非常に重要です。
コベナンツは、雇用主にとっては、会社のビジネスの評判、競争力、および機密情報を保護するための優れた手段です。ミシガン州では、このようなコベナンツを締結することは、それが合理的な内容であれば、一般的に執行可能とされています。すなわち、ミシガン不正競争防止法(MARA)[ii]は、雇用者が、「合理的な競争事業上の利益」を保護するために、従業員から契約上の保護を得ることを認めています。これには、従業員が「雇用終了後に他社での雇用や事業に従事すること」[iii]を禁止することが含まれます。 「合理的」であ(りそれゆえ執行可能であ)るためには、「期間、地理的範囲および禁止される雇用や事業のタイプ」[iv]が合理的である必要があります。ミシガン州の裁判所には、制限が合理的でないと判断した場合には、契約やコベナンツを合理的な内容になるよう修正し、その範囲で執行可能とすることが認められています。
では、「合理的な」競業避止または勧誘禁止とは具体的にはどの程度でしょうか?その答えは、雇用主のビジネス、従業員の役割、および適用される判例法によって異なります。クリストファー・P・イェーツ判事は、最近ミシガン州のバージャーナル(雑誌)に次のようにまとめています。
一般的なルールとして、1年以内の競業避止義務は、期間的には合理的である。また、雇用主の事業所から半径100マイル(またはそれ以下)に限定された競業避止義務は、ほぼ、地理的範囲という点で合理的である。最後に、競業避止義務の内容が従業員が雇用主の競合他社で働くことを単に禁止するだけの内容であれば、ミシガン州の法律で有効と認められる可能性が高い。期間、地域、および仕事の種類に関して、上記よりも広範な制限を課す競業避止義務契約は、不正競争防止法(MARA)が課す合理性の要件に抵触する可能性があろう[v]。
勧誘禁止義務については、一般的に、その内容はより制限が緩い、すなわち従業員が自ら習得した知識や技術を使って仕事をすることまで拘束することはありません。したがって、ミシガン州では、合理的で慣習的な秘密保持契約が有効とされるのと同様に、合理的な勧誘禁止義務を課すことは有効であると一般的に認められています。
最近のいくつかの裁判例がより具体的な指針を示しています。St.Clair Medical, P.C.[vi]において、裁判所は、元従業員である医師を拘束する競業避止条項を有効と判事しましたが、その条項には、「少なくとも1年」の期間、2つの診療所のいずれかから7マイル以内でという地理的制限が含まれていました。裁判所は、「医療現場では、コベナンツ(退職後に一定の義務を課す条項)は、離職する医師に患者を奪われることを防ぎ、医師の専門的な訓練に対する雇用者の投資を保護し、または雇用者のビジネス上の機密情報や患者リストを保護することによって、不正競争から保護することができる」[vii]と指摘しました。 注目すべきことに、裁判所は、「被告は、適度な地理的制限の外で診療を行う、または制限された地域内で診療を行うのならば契約で定める損害賠償金を支払うことにより、患者との関係を継続することができる」と述べ、コベナンツが公衆の利益に反するという医師の主張を退けています[viii]。
これに対し、Mid Michigan Medical Billing Service, Inc.では、裁判所は、期間の定めのない勧誘禁止条項について、不合理であると判事しました[ix]。裁判所は、元従業員が現在または過去の取引先との雇用機会を追求することを永久に禁止することは不合理であると述べています[x] 。本コベナンツの範囲は、(元雇用主の)機密情報やビジネス上の利益を保護するために必要な範囲をはるかに超える範囲で勧誘禁止が規定されていたものでした。
貴社の定める競業避止義務・勧誘禁止義務を含む従業員との契約は合理的で執行可能でしょうか。このような条項の作成・既存の契約の見直しについては、弁護士に相談し、後々裁判所に強制力なしという判断を受けるリスクを下げておかれることをお勧めします。
[i] A “restrictive covenant” is a label for contractual agreements not to solicit employees, clients, customers or vendors, not to compete with a current or prior employer, and not to disclose confidential or proprietary information belonging to someone else. Restrictive covenants generally restrict an employee’s actions following the end of their employment relationship for the benefit of the employer.
[ii] MCL 445.771 et seq.
[iii] MCL 445.774a(1).
[iv] Id.
[v] Hon. Christopher P. Yates, Restrictive Covenants: Burdens, Benefits, or Both?, Michigan Bar Journal, Sept. 2018.
[vi] St. Clair Med., P.C. v. Borgiel, 270 Mich. App. 260, 715 N.W.2d 914 (2006).
[vii] Id. at 266-67.
[viii] Id. at 270.
[ix] Mid Michigan Medical Billing Service, Inc. v. Williams, No. 323890, 2016 WL 682989 (Mich. Ct. App. Feb. 18, 2016) (quoting Borgiel, 715 N.W.2d. at 918–19).
[x] Id. at *5.
English version here.
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